アラビクは大阪市北区中崎町にあるブック&ギャラリーカフェです。
http://www.arabiq.net/



観光化とその弊害 #中崎町

 以下の文章は、2018年8月下旬に関西「報道ランナー」の取材を受けた際にまとめたものである。9月4日に大阪にて猛威をふるった台風21号により関西国際空港が機能していない9月11日現在、韓国からのお客様はほとんどいなくなった。

 なんだかんだと書いているが、経済がまわっていないとぼやくこともできない、と実感している。

 

#########################

 ご専門は? と聞かれるといまだに小さい声で「経済学ですが」と答えるほかない店主です。大学院を含め、若いころに7年費やしたのだから血肉です。

 

 先日、[外国人観光客増で住民困惑 レトロな街並み大阪・中崎町]という記事が日本経済新聞関西版に掲載されたようです。

 

 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34427140R20C18A8AC8000/

 

 曰く、

 

 

多くの外国人観光客が訪れる中、住民が困惑するのが写真撮影だ。築60年以上の民家で長く暮らす男性(64)は「自宅にスマートフォンのカメラを向けられることが増えた」と話す。写真撮影を禁じるステッカーを入り口に張っているが、SNS(交流サイト)の流行もあり、写真撮影に夢中の外国人の姿も。「落ち着いて暮らせない」とため息をつく。

 近隣の大阪市立扇町小では2017年ごろから「登下校中に知らない人に写真を撮られた」との相談が相次ぐ。昭和の街並みと児童のランドセルという構図が外国人に人気とみられ(後略)

 

 といった内容。思い当たることは多々あります。

 

 大きなポイントが二つあると思います。

 

 1.傍若無人な写真撮影の弊害は外国人特有のものではない/ヘイトと結びつけてはならない

 

 2.公害とは経済学でいう「外部不経済」の問題である。

 

 説明します。

 

 1.傍若無人な写真撮影の弊害は外国人特有のものではない/ヘイトと結びつけてはならない

 

 「旅の恥はかき捨て」とばかりに写真を撮りまくるのは、外国人観光客に限ったことではありません。10年くらい前は、mixiの「中崎町コミュニティ」でさかんに撮影マナーについて議論されていました。 

 

 1.-1 団塊世代

 当時は定年退職し、暇を持て余した団塊世代の人たちがデジタル一眼レフの撮影会などで中崎町を撮影してまわる、というのが多かったと記憶しています。当店ではハウスルールとして「(ア)店内にお客様がいる (イ)レンズが明らかに店に向いている 」場合には必ず「店内にお客様がいらっしゃいますので、撮影はやめてください」と大きな声で注意をしていました。そうされるとオジサンたちはちょっと拗ねたような顔をし、オバサンは苦笑いを見せたものです。

 最近はオジサンたちも年を重ねたせいか、数が減りました。しかしまだまだ集団心理に突き動かされる撮影ツアー隊は尽きないのだ。

  

 1.-2 個撮

 聞きなれない言葉かもしれませんが、個撮=個人撮影というものがあります(しかしいま個撮/個人撮影で検索すると、アダルト動画のサイトばかりがヒットしますね)。ようはモデルさん(プロ・アマ問わず)に依頼をして、ポートレートの撮影をするというものです。おそらく時間限定でお金を払っているからか、大きな機材を持ち、時にはフラッシュを炊いて店内で撮影をはじめる人たちもいます。これはすぐにNGを出します。「(ア)他のお客様が映り込む (イ)作品(著作権が発生するもの)が映り込む (ウ)その他くつろげないと店のスタッフが判断した」いずれかの場合がNGです。

 

 1.-3 外国人観光客

 最近は外国人観光客が増えています。アジアからの観光客が多いですが、時期によってはヨーロッパの人が多くなったり、オーストラリアの人ばかり、ということもあります。

 

 1.-3-1 言葉の問題

 特に言葉の問題もあり、厄介だな、と思いながらもどう注意したらいいのかが分からない、というのが問題の一つです。

 「そこで撮らないで=「ノーフォトゼア」 ●●(子供)を撮らないで=「ノーフォトオブ●●(チルドレン)」 それ(ら)を撮らないで=「ノーフォトイット(ノーフォトゼム)」」くらいをまず覚えて、声をかけるといいでしょう。

 

 1.-3-2 SNSの即時性と公開性の問題

 これが先に書いた団塊一眼レフ拗ね拗ねオジサンの時代との違いですね。おそらくインスタグラムに挙げられているのでしょうが、英語以外の言語を使っているアジア系の観光客がどんなタグで検索しているかがわからないので、チェックが難しい。

 ハングルだと「中崎町カフェ通り」=「나카자키초카페거리」というタグで画像が上がっていることが多いようです。

https://www.instagram.com/explore/tags/%EB%82%98%EC%B9%B4%EC%9E%90%ED%82%A4%EC%B4%88%EC%B9%B4%ED%8E%98%EA%B1%B0%EB%A6%AC/?hl=en

 

 当店の場合、近隣の民家の玄関先に立って撮影をされる場合があるので、閉店中は「NO PHOTO」と書いた紙を貼りだしています。開店中は注意をしに出ます。そこで撮らないで=ノーフォトゼア です。

 

 

 

 2.公害とは経済学でいう「外部不経済」の問題である。

 

 経済学では経済活動の当事者以外に影響を与える便益/費用などが発生することを「外部性」といいます。プラスに働く(=「外部経済」)ことも多いのですが、マイナスの場合もあります。典型的には公害などが「外部不経済」の例として挙げられます。

 経済の取引の当事者以外に損害が生じるものが外部不経済。たとえば工場が廃液を垂れ流すことによって周辺の漁師の漁獲高が減じてしまう、という場合、どう対処されるのでしょう?

 

 一般的には政府セクターなどが「公害税」などをその工場から徴収し、廃液の除去システムを設置したり、漁師への金銭的補償をすることになる、と説明されます。実際のところそうなる前に、生産量を抑えることで廃液を減らしつつ、廃液を少なくする方向に行くはずです。

 

 では中崎町の事例ではどうでしょうか?

 ここで経済の当事者は「中崎町の各ショップ」と「観光客」。不経済を被っているのは「住民」ですね。

 観光客は雨が降ってもいらっしゃるので、その恩恵を受けていないショップはほぼない、と言えるでしょう。やはり「各ショップ」がなんとかするべきですね。

「インバウンドは日本政府や大阪府市が一体となって推し進めてきたのだから、その対策もすべきだ」というのも当然ですが、その財源は筋から言うと「中崎町の各ショップ」が受益者負担するべきもの、となるでしょう。

 そもそも「レトロな佇まい」という住民が残してきた財産=外部経済に乗っかることで成立しているショップも多いわけです。

 各ショップが何らかのアクションを起こすべきだということは間違いありません。

 

 とはいえ、看板や貼り紙というのは野暮ですし、それが景観を悪化させることになると思います。

 

 提案

 1.声かけ 先ほど書いた通り、声掛けをするという方法です。

  そこで撮らないで=「ノーフォトゼア」 ●●(子供)を撮らないで=「ノーフォトオブ●●(チルドレン)」 それ(ら)を撮らないで=「ノーフォトイット(ノーフォトゼム)」

 

 団塊オジサンの一眼レフツアーのときも「下駄箱とか撮らんといたって」と声をかけてきました。一瞬意外そうな顔をしますが、聞き入れてくれるものです。

 

 余談ですが、劇作家の鴻上尚史が日本には村社会の名残の「世間=知っている人たち」と「社会=知らない人たち」とを分けて行動をする、と書かれています。電車で化粧をするのはそこが「社会」だからで、そこに同僚が乗り込んできたら「世間」となり、化粧をすることが気まずくなるだろう、と。

 

 知らない人に話しかける、というのは社会に参加することです。社会にむけてコミュニケイションをするのは難しい、と鴻上氏も書いています。大切なのは4つのステップだ、と。

 「1・相手のしたことを具体的に説明する」

 「2・その結果、あなたにどんな影響があったか、具体的に説明する」

 「3・現在の自分の感情を冷静に伝える」

 「4・冷静に自分の希望を語る」

 

 「社会」と「世間」――コミュニケイションの使い分け方 鴻上尚史

 https://nikkan-spa.jp/639418

 

  僕は先日、映画『ウルフ・オブ・ウォールストリート』を見に行きました。隣に三十代のカップルが座っていたのですが、女性が映画の途中で何度もスマホを見ました。最初は時間をチェックしていたようですが、五回目ぐらいから、とうとう、スマホの写真をじっと見始めました。

 相手は「社会」に住む人です。僕となんの関係もないですからね。

「社会」に向けたコミュニケイションの始まりです。

 ここでまず、一番やってはいけないのは「(スマホを)しまって下さい」とか「そんなことやめて下さい」という言葉です。「しまって下さい」は、いきなりの命令です。それは「世間」では成立する言葉ですが「社会」では成立しません。

 こういう時は、まず、「1・相手のしたことを具体的に説明する」。僕は横の女性に向けて「あの、隣でスマホを見られると」と言いました。

 次が「2・その結果、あなたにどんな影響があったか、具体的に説明する」。僕は、「まぶしくて、画面が見にくいんです」と伝えました。

 ここで、その女性は、ハッとしてスマホをしまってくれました。もし、ここでもしまわなければ、「3・現在の自分の感情を冷静に伝える」。冷静が大切です。「見にくくて、とても困っています」と、僕は伝えたでしょう。そして、「4・冷静に自分の希望を語る」。「すみませんが、上映中にスマホを見るのをやめていただけませんか」と伝えます。

「社会」に対する「交渉」はこの4つのステップが基本です。遅刻ばっかりする人に対して、「もう許さん!」とか「クビだあ!」とか、いきなり自分の感情や命令を伝えるのではなく、まず、具体的に相手に自分が何をしたかを伝えることが大切なのです。「また遅刻した!」ではなく「今日は15分遅れましたね。三日前は10分遅れました」と言うのです。そこから、やっと「交渉」が始まるのです。

 そして、自分にどんな影響があったかを具体的に語り、そして、自分の感情を冷静に語るのです。難しそうですが、結果的にはこうした方が事態は簡単に進むのです。

 

 

 子供や洗濯物にカメラを向ける外国人に咄嗟にこの4つのステップで話しかけるのは難しいでしょう。いきなりの禁止、にならざるを得ません。それにまあ、向うは「世間」の住人ではないのだし。外国でのディスコミュニケーションとして受け入れてもらうほかないのではないか。

 

 思えば団塊オジサンには「中にお客様がいらっしゃいますので、撮影はやめてもらえますか」と伝えてきました。これを4つのステップを踏まえるとすると

 「1・相手のしたことを具体的に説明する」=「撮影されていますね」

 「2・その結果、あなたにどんな影響があったか、具体的に説明する」=「中には写りたくないお客様もいます」

 「3・現在の自分の感情を冷静に伝える」=「わたしは困っています」

 「4・冷静に自分の希望を語る」=「撮影をやめてください」

ということになるでしょう。

 

 子供を撮影している外国人相手だと

 「1・相手のしたことを具体的に説明する」=「子供を撮っているね=you take photoes of them」

 「2・その結果、あなたにどんな影響があったか、具体的に説明する」=「子供が危険に巻き込まれる可能性がある=It may have children involved in crimes」

 「3・現在の自分の感情を冷静に伝える」=「わたしたちは困っている= We feel uneasy」

 「4・冷静に自分の希望を語る」=「撮影をやめて、画像も消してほしい=No photo of them ,delete the photoes ,please 」

 ということになるでしょうか。

 

 そして、英語が外国人みんなにつたわる真の国際共通語ならいいのですが……

 

犬のレリーフ〜高橋野枝個展「とまりぎ」より〜

7月下旬から始まった高橋野枝個展「とまりぎ」ですが、会期も残すところあと5日となりました。
有名なレリーフといえばハン・ソロですが、今日は「犬のレリーフ」を紹介します。

日本の作家には犬好きより猫好きが多いような気がします。
餅のような猫もいれば、雌豹のようにしなやかな猫もいるように、犬にも鞠のような犬がいたり、ドジョウのように(ボディラインが)ぬるっとした犬がいたりします。
このレリーフの犬はドジョウ系ですね!(野枝さん怒りませんように……)

写真だと凹凸がわかりにくく、ともすれば平面のように写ってしまうので、
陰影や立体感がわかるように気を付けて写真を撮りました!
ウエストラインのぬるっとした曲線が伝わればいいのですが。

黄色い光の下だと土のよう
白い光の下だと石のよう

昔ながらの土壁を思わせる色と手触りの枠のなかに、石塑粘土でできた犬が横たわっています。
縦に置いたとき、横に置いたとき、それぞれに異なった表情を見せるわんこです。
犬好きとしては、背骨と両脇腹の三辺で形作られる、胴体の三角柱っぷりがツボにきます!

あの、古き良き日本の雑種犬に定番のフォルム……。
血統種だとダルメシアンとかのボディラインに近いですかね。
いや、でも、この雑種感がいい!と主張したい!

股関節のあたりでキュッと締まったウエストが、光のあてかたで様々な影をつくります。
ざっくりとした彫りは一見簡単そうに見えますが、少ない回数で完成イメージに到達するための確かな技術力を要します。

胴体の細かい彫りは、短い体毛の下の、皮膚の波打ちを想像させるようです。
犬の短毛種の毛って、猫の毛とちがって硬いんだこれが!
だから体を丸めると、体毛同士が干渉しあって、凍った湖の御神渡りのようにミョミョミョっとなるんですよね。
彫りの質感がそのミョミョミョってかんじを出してて、とても良い!

尻尾の毛は長いタイプ。

野性味のある顔つき。顔に対して大きい目には、生命力がみなぎっています。
「午睡」ちゃんのときも思ったんですが、口のビロビロも表現するところが真正の犬好きを感じさせます。

頭の下、金色に着色された部分は何でしょう?
作品の構成上、挿し色の役割をしている抽象的な存在、と考えるかたもあるでしょうし、助手はこのこのお気に入りの毛布かタオルケットだと想像しています。
きっと、そばに置いて毎日見ていると、また新しい解釈に気付く瞬間があるはずです。
日常の中に新しい世界が開ける経験をする。美術品をそばに置くことの醍醐味のひとつですよね。

ミニマルな要素で構成されていながら、鑑賞者に解釈を委ねる作品を生み出すのは、決して一過性の人気作家ができることではありません。

レリーフ好きのかた、犬好きのかた、ハン・ソロ好きのかた、
お問い合わせは
cake@qa3.so-net.ne.jp へメール
もしくはお問合せフォーム http://arabiq.net/contact より
ご連絡ください!

高橋野枝の作品の秘密に迫りましょうか

 高橋野枝個展「とまりぎ」開催中です。

 

 アラビクはカフェでもあるのでいろいろなお客さまが「球体関節人形」をご覧になります。はじめて見た、というたからは「動きそうですね」と言われるのですが、夜のうちに勝手に動くわけはなく……否定するのも愛想がないので「はあ、関節があるから動きます」と答えることが多くなります。

 

 さて、高橋野枝の作品の話です、今回は手足が動くぬいぐるみと、水性樹脂などで象られた大きなオブジェを展示しています。後者に関して、人形をよく知るお客様や作家から「動きそうですね」と言われると「たしかに」と思います。

 それは肩や後ろ脚のライン、横たわったお腹の垂れた造形の描写力と、実際にいる生き物とは異なった素材の見せ方という、現実にいそうで、しかしフィクショナル、というバランスによるのでしょう。

 

「人形」には様々な要素がありますが「携行性」もその一つでしょう。遊ぶために運べること。敷衍すると「運べそう・動きそう」と思わせるものであれば、どれだけ大きくても「人形」なのです。

 

「午睡」……眉間のしわと、力の入った後脚の緊張感は「動き」を伝えます。いっぽうで眉間と脚の間にある尻尾は、布で小さく表現されるばかり。写実的な、本物そっくりの「写し」では額と足の連動は伝わりにくくなるでしょう。

 

 

「No Title4」……膝に手をのせ踵を引き寄せた、小さくした身に、うつむいた顔。一見すると落ち込んでいるように見えますが、なだらかな肩が緊張感を緩和させています。落ち込んでいるかのようなこの作品に悲壮感がないのは、この「緊張の緩和」があるからですね。

 

「緊張の緩和」についてもう少し考えてみます。

 

「午睡」も「No Title4」も、人や動物の形をしたものが、エイジングした布と紐でで包まれています。目地の見える布や紐は見慣れたものですが、それが貼られたボディは普通ではありません。普通でないものにわたしたちは緊張します。

 しかしこれらの作品には、高橋野枝の正確な描写力や、現実の犬に近いサイズにより、生き物として圧倒的な存在感があります。見慣れたものへの安心感。

 

 この「緊張の緩和」というものは桂枝雀が体系化した「わらわしかた」の理論ですね。布という虚構に包れた圧倒的な描写力と布の尻尾に見られる虚構。そこには入れ子構造のユーモアが生じます。だからずっと見ていられるのです。

 

 ずっと見ていられる。気がつくとほほえみを呼ぶ。

 

 それが高橋野枝の作品なのです。

 

 

 外国カァらのお客様にも大人気! てぬぐいいカァがですカァ?

 

 お問い合わせは

 cake[at]qa3.so-net.ne.jp にメール または
 お問合せフォーム http://arabiq.net/contact カァら
 お名前・ご住所・電話番号を添えて連絡ください。カァ!

くわい〜高橋野枝個展「とまりぎ」より〜

「くわい」

「とまりぎ」会期も残すところあと10日ほどとなりました。
今日は「くわい」ちゃんを紹介します!

大きさ約20cm。
桐塑と水性樹脂でできています。

縁起物としておせち料理で見ますよね、くわい。
くわいをご存知ないかたのために、念のため。
くわいです。野菜です。

こちら、くわいちゃんです。
お顔が芽を下にした、くわいの形です。

 

スタンドに立ってもらうと、なんていうか……こう……蜂の子っぽい。
実際はフワフワでもプニプニでもないのですが、まるまると太った芋虫のような、絶妙な弾力と重量感を想像してしまいます。


下から見えている中身?は苔のような質感と色。
同じものが頭に巻いた布のふちからものぞいています。
ぐるぐる巻きの 下は苔が生えているのか……?


首のリボン結びがキュート。それとも、それ以上の理由が……?

髪の毛のようなものもあります。
ベリーショートの前髪かな?
里芋の皮についてる毛っぽくも見えますね。
ちなみにくわいはジャガイモと同じ塊茎だそうです。
サトイモは球茎。

「芽が出る」から「芽出たい」ので縁起物とされるくわい。
芽が出ると勢いよく伸びるんだそうです。
くわいちゃんでいうと鼻?にあたりますね。
もしかしたら成長とともに鼻が伸びる生き物なのかもかもしれません。
シュティンプケの小説、「鼻行類」を思い出します。

さて、ミニマルな造形のくわいちゃんのお顔ですが、
上から下から斜めから、光と目線の角度を変えていくと、意外なほど表情が豊かなのです!
単純そうに見えて、手作業による微妙な凹凸が複雑な影を作り出しています。
表情の要となる目は、すこし角度をつけて切れ込みを入れることで、喜んでいるようにも、悲しんでいるようにも見えるようになっています。
能面にも使われている技術ですね。


と、いろいろ書くよりも、いろいろ写真撮ったんで、見てください!

時空を超えて思いを馳せるような目。

ムニャムニャ、もう食べられないよお……と夢心地。

いたずらを思いついたときの顔。

「いやいや何でもないよ?」(何かいいことあった?と問われて)

お気に入りの作品を買って家に帰りながら(このこはあのこの隣に座ってもらって……)と配置を妄想しているとき。

に、道で知り合いとばったり会ったとき。「ん?あ、どうも〜」

いちにちの終わり、湯船に浸かりながら。

おやすみなさい。

見るものとの無限の会話を予感させる、くわいちゃん。
このこはどんなこだろう?
どこから来た?どんなところに住んでいる?
くわいちゃんと向き合うと、幼い頃、画用紙いっぱいに描いた絵のように、「くわいちゃんとわたし」の物語が次々と浮かんできます。

小説で名作と言われる作品は、作者の意図を超えて、読者の様々な解釈に堪えることができるものです。
くわいちゃんにも、名作小説に通じる底力があるように思います。

では、最後に。

わたしと暮らしたいひとは、
cake[at]qa3.so-net.ne.jp にメール または
お問合せフォーム http://arabiq.net/contact から
お名前・ご住所・電話番号を添えて連絡くださいね、の顔。

「遠く」〜高橋野枝個展「とまりぎ」より〜

みなさん、先日のパッション溢れる記事読んでくださいましたか。
己をさらけ出すということは勇気がいるもので、また読者の反応がすこぶる気になるものでございます。
が、あえて後ろは振り返らず、今日もパッション大放出で紹介しますよ!

「遠く」というタイトルの作品。

鼻の先から尻尾の先までが43僉
つま先から鼻の先までの高さが45僉
胴体のいちばん膨らんだところの幅が20僉

 

 

 

からだは「午睡」と同じく布やひも、羊毛で覆われています。

一見したところ、子羊のように見えます。
指先は爪と肉球で大地を踏みしめるのではなく、蹄のように、キュキュッとしていますね。
しかしあえて蹄として形作るのではなく、脚をひとつのまとまりとして表現しています。
具象と抽象の真剣なせめぎ合いを垣間見る思いです。
と真面目に書くそばから、もうひとりの私がささやくのです……
こぶしで立っているよう見える……こぶし……グー……グゥてい……
ヤダ!かわうぃ〜!
このこは羊なんかじゃないわ!グゥ蹄よ!グゥ蹄類という未知の生き物なのよッ!

ということで、グゥ蹄類「遠く」ちゃんを詳しく見ていきましょう。

緊張感のある立ち姿は、鋭さのある白い光が似合います。
羊もこんなふうに空中の一点に意識を集中させることがあるのでしょうか。
反った胸から鼻の先に至る曲線を見て、私がいちばん最初に思い浮かべたのはやはり犬のことでした。

花々の気配が空を満たす春の昼下がり。
刻一刻と空気が湿り気を帯びていく夏の日暮れ。
秋の草が綿毛を飛ばすよく晴れたの日。(このあとくしゃみをする)
濡れた鼻先がピリリとするような冬の夜。
わずかに反った背中は、走り出したい衝動をグッとおさえているようにも見えます。

 

このこは今、何を感じ取っているのでしょう。

濃密な香りから、春の野原を。
肌にまとわりつく空気から、夕立の気配を。
爽やかな風から、里の実りを。(このあとくしゃみをする)
澄んだ空に、よく響く遠吠えを。


下から見上げるように写真を撮ると、神獣のよう。
こちらの存在に関係なくただそこにいる、絶対的な距離感。

 

そんな上半身(まえ半身?)の緊張感に対して、おしりが無防備なことよ!
形状は羊っぽい、あの、プルプルするやつ。
色の濃い羊毛で表現されています。これは
「ほれほれ、尻尾はここだよ。触らないのかい?」と言っているようなものです。
触ってしまうと、ずっと撫で続けてしまうやつです。


右のお腹には、お花模様のゴブラン織りが。
この花はきっと好きな食べ物だと想像します。


控え目なお耳。
食いしん坊にも、おしゃべりにも見える口もと。

顔を近づけると、磨きや彩色の重ね具合に加え、単純に見えるけれど連続的で複雑な造形の様子が見て取れます。

アーモンド形の目は、犬とも羊とも違います。
陸上の哺乳類は、白目がほとんど露出していないものが多いそうです。
光を反射しやすい白目を隠すことで、敵から身を守っているのだとか。
「遠く」ちゃんの目は、イルカやクジラの目と似ているでしょうか。
好奇心や茶目っ気と思慮深さが共存している瞳です。


ありのまま存在することで、ありのままを受け止めてくれる、良い距離感。
目線は遠く、交わらないようでいて、実は見るもののそばに寄り添ってくれる作品なのではないでしょうか。
以上、「遠く」でした。
「遠く」ちゃんにそばにいてほしい、というかた、
お問い合わせは
cake@qa3.so-net.ne.jp へメールまたは
当店お問合せフォーム http://arabiq.net/contact から
お名前・ご住所・電話番号を添えてご連絡くださいませ。
午睡〜高橋野枝個展「とまりぎ」より〜

前回と前々回のブログ、助手が書いておりましたが、読んだ店主から
「作品に! 入り込ンだ文章を! 書くンだよ!!」
という指導が来たので、今日はパッションを解放して「午睡」ちゃんを紹介します。

「このこに会いに来たの!」というお声をたくさん頂きます。
タイトルは「午睡」。

人体に影響の少ない新素材・ジェスモナイトを用いて成形した後、布やひも、羊毛で覆ってからだを表現しています。
顔と足は木粉粘土。

搬入日、このこが箱から現れたときの衝撃たるや!
「うふぁあん! かわいい〜〜〜〜!」と思わず声をあげてしまいました。
いぬ!
寝てる! いぬ! たまらん!

ひととおり興奮したら、いろんな角度からじっくり見ます。
すやすやと寝ていると思いきや、眉間にはしわ。
口もわずかに開いています。
脚は弛緩しているというよりも、力が入って地面から浮いているように見えます。
おだやかな「午睡」と思っていたがこれは……
爆睡中というよりむしろ……夢を見ているときの……犬!
しかも、寝言を言いながら足を動かし始める直前に違いありません。



ああ、ちょっかいを出したい……。
耳をつつっ……と持ち上げてみました。
これは! 「うぅん……ねえちゃん、やめてぇや……ムニャムニャ」の!顔!
耳に息を吹きかけたくなっちゃう顔ですよね!

展覧会が始まって数日、犬経験が少ない店主が
「毛が部分部分にしかないのに、痛々しく見えないのが不思議ですね」と
お客様に話していたとき、助手は気付きました。


これ……換毛期の犬やん……。

午睡ちゃんの毛があるとこ、からだの中でも特に毛がモッサリ抜けるとこやん。

背中から肩にかけたライン、首まわり、前脚の付け根付近の脇腹、大殿筋あたり。

そっと触ってみると、羊毛の弾力のある手触り。
ここで羊毛を使うのか! と、考え抜かれた表現に脱帽!

タオルケットをかけてあげたい衝動に駆られて、箱に一緒に入っていた布をかけてみました。


え、なにこれ切ない!!
見えている部分は少なくなったのに、前よりも犬との思い出の一点をピンポイントで突いてくる!
うちのコ柴犬だったからぜんぜん外見違うはずなのに!
泣く! 泣きそうよわたし!

昨年わんちゃんを亡くされたというお客様にもこの姿をお見せしたところ、
「うわ!鳥肌立ったわ……」とおっしゃっていました。
ですよね。鳥肌もんですよね。

ところで、午睡ちゃんに尻尾らしい尻尾はありません。
お尻の部分にやわらかめの木綿布がちょろっとあるだけ。
全身も真っ白ではなく、すこし日に焼けたような色合いです。

どこからどう見ても犬なんだけど、どの犬種でもない。

このことが午睡ちゃんを特別な作品にしているように思います。
セピア色のこのこが寝ている空間だけ、思い出のなかの一瞬から抜け出してきたように感じられるのです。
具象と抽象の混在が、見るひとの心象風景を投影させるのでしょうか。

 

野枝さんの表現のひとつの到達点ともいえる作品です。

ということで「午睡」ちゃんでした。
大きさ約70センチ。クッション付属です。
午睡ちゃんと一緒に暮らしたい、というかたは
cake[at]qa3.so-net.ne.jp にメール もしくは
お問合せフォーム http://arabiq.net/contact から
お名前・ご住所・お電話番号を添えてご連絡ください。

パッション溢れる助手がお伝えいたしました。


 

レム〜高橋野枝個展「とまりぎ」より〜

高橋野枝個展「とまりぎ」にたくさんのご来場を賜り、ありがとうございます。
会期はあと2週間。
あれ、こんなコいたっけ?と思ったら遠慮なくお問い合わせください!

今日はレムちゃんをご紹介しましょう。

「レム」

座ったときの高さ約30僉
頭の先から尻尾の先まで約47僉


真っ白でふわふわの、不思議生物。

 

首、両肩、両脚にジョイントが入っているので、ポーズも思いのまま!
首が動くだけで、こんなにも目が合う瞬間が増えるのか! と感動しますよ。


そして、確認が欠かせないのが、おしり*。
あります。

長めのお御脚。
跳躍力がありそうです。

お顔を見ていきましょう。


猿のような、羊のような……。


顔部分は桐塑を用いています。
軽くて堅い仕上がりなので、
細かい作り込みも丈夫で、安定感があります。
繊細なつくりの舌と口蓋。

レムちゃんはおしゃべりも自由自在なのかもしれません。

うえの歯。

 

したの歯。

耳には皮をはっています。

ふわふわの全身のなかで、唯一ザラついた手触り。
「生」の感覚にハッとします。

ドールスタンドで立たせてみました。

急に俯きがちに……!
ご、ごめんよ。


からだに対して首が前傾しているんですね。
その角度が最大限に生かされるのが、抱っこして見つめ合ったとき。
モデル:森内。

 

森内目線ではこう見えています。


つぶらな目は作家の自作です。
澄んだ水面を覗き込んだときのような、光と影の揺らぎを映しています。

以上、「レム」でした!
お問い合わせは
メール cake@qa3.so-net.ne.jp または
お問合せフォーム http://arabiq.net/contact から
お名前・住所・ご連絡先を添えてご連絡くださいませ。

リリィ・ベベ(ピンキッシュ)~高橋野枝個展「とまりぎ」より~

高橋野枝個展「とまりぎ」会期2週目がはじまりました。
もうひとりのリリィ・ベベを紹介しましょう。

 

 

リリィ・ベベ(ピンキッシュ)。

淡いピンク色のモヘアで包まれたリリィ・ベベです。
自然光と相性が良かったので、屋外で撮影してみました。

 

 

 

稲荷神の眷属を思い起こさせる気高い出で立ち。

 

正面から見ても、すこし首をかしげていて、
見るものを試すような視線を送ってきます。

脚の付け根にジョイントが入っています。

 

立ち姿。堂々としています。
溢れる自信が口もとの微笑みに表れているよう。

 


後姿のしっぽをめくると……おしり*!

書き目をベースに
黒目部分にカットしたガラスをあしらっています。
エキゾチックな目元が思わぬ光を反射して
さまざまな表情を見せてくれます。

下から見た図。
意外にも牛さんっぽい。
写真ではわかりづらいですが、
鼻と口もとに光沢のある塗装を施しています。


桐塑を用いた頭。
軽くて丈夫、一緒に遊びやすい素材です。

室内で撮った写真との比較はこんなかんじ。
黄色い光の下では桐粉のもつあたたかい風合いと
複雑な色の重なりが浮かび上がります。

以上、リリィ・ベベ(ピンキッシュ)でした!


お問い合わせは
cake@qa3.so-net.ne.jp へメールか
お問い合わせフォームから http://arabiq.net/contact
お名前・ご住所・電話番号を添えて
ご連絡くださいませ。

リリィ・ベベ〜高橋野枝個展『とまりぎ』より〜

高橋野枝「リリィ・ベベ(フラワー)」

 

高橋野枝個展『とまりぎ』より「リリィ・ベベ(フラワー)」をご紹介します。

70年代テイストの花柄が目を引くキッチュなリリィ・ベベ。


毛足の長いブラシ素材は、
まんべんなく毛を抜くことで
ピンクの下地を見せるという小技がきいています。
ブルーとピンクのコントラストが目を引く……。

脚の付け根にジョイントが入っています。
この角度でもしっかりポーズがとれ、
技術の高さがうかがえます。↓

ドールスタンドで立たせてみると、
なんとも高貴なたたずまい!

お顔のアップ。


下から見るとわかる、微笑みをうかべた口もと。

眉毛もあります!繊細な筆遣い。

桐塑を用いた頭部に、ぬいぐるみのからだ。
軽くて丈夫。一緒に遊んでいくうちに味わいが出る素材です。


自作の目はさながら宇宙のよう。
光はもちろん、映り込む影すら
表情の一部にしてしまう。

斜めに走ったおなかの縫い目に
あなたならどんな物語を添えますか?

以上、「リリィ・ベベ(フラワー)」でした!


お問い合わせは
mail: cake@qa3.so-net.ne.jp
またはお問い合わせフォーム: http://arabiq.net/contact
お名前・ご住所・お電話番号を添えて
ご連絡くださいませ。

高橋野枝個展と人形ウィークin大阪

 地震や大雨に続き、炎暑。なんだか料理でもされている気分になりますね……と暢気なことを書いているようですが、地震では当店も思った以上の被害を受けました。

 南北に揺れたせいか、長屋の北端に位置するアラビクでは北に位置する壁が揺れたようです。本棚、食器棚、ショーケースを北側に並べているため、厨房は割れた酒瓶、シロップ、カップやグラスでひどいものでした。一歩足を踏み入れるや、滑って後ろ向きにひっくり返る体たらく。やれやれ、です。

 

 しばらくカフェ営業は土間のみで行っています。

 

 時間は過ぎていきます。今週の19日(木曜)には高橋野枝個展「とまりぎ」が開催されます。

 この企画は

心斎橋大丸での「SWEETS KINGDOM」(7月18日(水)-24日(火)クラフトアート人形コンクール実行委員会)→わたしの人形物語

乙女屋での藤本晶子個展「君の秘密の隠し場所」(7月12日(木)-24日(火))→乙女屋サイト

 と連動しています。どうぞぐるぐるお運びください。

 

  高橋野枝個展「とまりぎ」

 【会場】珈琲舎・書肆アラビク

    〒530-0016 大阪市北区中崎3-2-14  

 

 【会期】7月19日(木)-8月13日(月)

    会期中水曜休 13:30-21:00/ 火・日-20:00

 

 【お問い合わせ先】

    t/f 06-7500-5519

           mail calke[at]qa3.so-net.ne.jp  [at]=@

 

 

 

 DMはNoeさんが生み出した生き物が、一生懸命Noeさんのために喋ってる感じです。お楽しみに!