アラビクは大阪市北区中崎町にあるブック&ギャラリーカフェです。
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寮美千子・山本じん『絵本古事記 よみがえり イザナギとイザナミ』山本じんによるアプローチ
 寮美千子・山本じん『絵本古事記 よみがえり イザナギとイザナミ』刊行記念山本じん個展は無事に終了いたしました。おかげさまで大変ご高評を賜りました。ありがとうございます。成約していない原画作品は引き続きアラビクと乙女屋でお客様に紹介しておりますので、お問い合わせくださいませ。

 さて、今回の「絵本古事記」にはユニークな要素がいくつもあります。いくつかに分けて紹介していこうと思います。
 ・珍しい古事記のビジュアライズ
 ・ぎりぎりまで削がれた寮美千子の文章
 ・銀筆という幻のような技法で描かれた絵画
……など、多くの魅力に溢れた絵本です。
 
 今回はどのように山本じんが古事記に挑んだのか、その一端を紹介します。


 古事記のビジュアライズは意外に多くないように思います。「絵本古事記」の表紙画を見てみましょう。表紙画のイザナギとイザナミの純粋な気配が目を引きます。淡路島など、古事記ゆかりの土地に置かれた銅像や絵画だと、「神さま」ということを意識してか、たっぷりとした肉付きのふたりが長いシャベルのような矛を持った姿であらわされていますが、イザナギとイザナミはうまれたばかりの神さまで、これから数多くの土地や神を生みだしていくのですから、若々しい姿で描かれなければなりません。 


◆「天沼矛」

 イザナギとイザナミが手にしているのは「天之沼矛」。「沼=ぬ」は小さな玉のことだそうです。小さな玉のついた矛……山本じんは常人には想像しえないような沼矛を示してくれました。


 ◆「燭火入見之時」
 国を産み、数多くの神を産むイザナミですが、火の神カグヅチを産み落とすとその火が燃え移り、死んでしまいます。イザナギは恋しさのあまり、黄泉の世界に赴き、イザナミを探します。寮美千子のテキストを引用します。

 イザナギは、約束を守り、長いこと待ちつづけました。しんとして、物音ひとつしません。「イザナミ、イザナミ」と小声で呼んでみましたが、返事がありません。イザナギはとうとう、櫛の歯を一本折ると、火を灯し、そっと、のぞいてみたのです。

 
 山本じんは気配を描いている。闇のなかに灯った火の眩しさ。その奥に横たわる黒々とした予感。


 銀筆については、以前は海外のサイトしか参考になる情報がなかったのですが、最近になって日本語版のwikipediaに独立した項目ができました。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%8A%80%E7%AD%86
 鉛筆の登場以前に描画に使われた金属のうち、もっともよくつかわれたものが銀筆。鉛も使われたようですが、現在の鉛筆の芯は鉛ではなく「黒鉛」。化学式は「C」。つまり炭素です。
 金属なので当然硬い。普通の紙に書くことは難しく、ある程度柔軟性のある下地が必要です。17世紀以前は漆喰のようなものや羊皮紙などに描かれてきました。銀による線は数百年の時を超えて残っていますが、それ以外の下地は剥落したものが多いようです。人形作家としても名高い山本じんは、人形の肌としても用いられる胡粉を練ったものを下地として使用しています。


 ◆我(我ヲ視ル莫レ)部分



 これは接写で拡大撮影した、1センチ四方に満たない渦巻の部分。寮美千子はこう書いていました。

愛しいイザナミの体には、うじ虫がたかり、はいまわり、頭には大雷、胸には火雷、お腹には黒雷、股には析雷、左手に若雷、右手に土雷、左足に鳴雷、右足に伏雷、あわせて八くさの雷が、蛇のようにとぐろを巻き、のたくり、うごめいているのでした。

 接写をするという野暮をお許しいただきたい。胡粉の下地に銀筆による掻き傷、描線、白と黄色の絵具が観察できます。黒を強く出したいときは、硫黄の粉末等で化学変化をおこすのだそうです。
 アラビクでご覧いただける山本じんの銀筆作品は2000年頃のものがあります。描かれたときにはグレーに見える銀がおちつき、線がセピア色の硫化銀へと変化しているのがわかります。
 

 ◆「予母都志許売(黄泉醜女)……イザナギの髪を結っている紐は、葡萄の蔓だという。これをとって投げることで、黄泉の国に葡萄が実る。ヨモツシコメたちはがつがつとその葡萄を貪る。緊張感とユーモラスさを併せもったシコメたち。山本じんに訊ねたところ、これは暗黒舞踏のイメージなのだと明かしてくれました。
 


 古代からの物語は、個々の人生や、共同体のありかた、自然の不思議さなど、様々な要素の集合体と言えるでしょう。それを表現するには、作家も人生の総てを動員して立ち向かうことになります。一つ一つの絵に様々なチャレンジがあること、作家がこめたアイデアを読み解くことは絵画鑑賞の大きな楽しみですね。

 (続く) 
 
有栖川有栖色紙プレゼント
 さて、再び『闇の喇叭』関連でお知らせです。現在『闇の喇叭』特設サイトにて、有栖川有栖さんのサイン入り色紙のプレゼント企画が始まっています。ぜひご応募されてみてはいかがでしょうか?
http://www.rironsha.co.jp/tokushu/yaminorappa/index.html

今回のイベント時ではないのですが、有栖川さんがサインの猫を書いていらっしゃるところを初めて拝見したとき、大層感動いたしました。当店には有栖川さん手書きのポップをご用意していただきましたので、こちらもご覧いただけたらと思います。



ロマン文庫と署名本
 金子國義の絵が表紙となっているロマン文庫を集めてみました。 



 左上から、『ぼくのヴィヴィエ夫人』『好奇心の強い女』『快楽泥棒』『人妻キティ』『アダムとイヴ』、写真にはありませんが唯一帯付きの『少女ヴィクトリア』も並べました。いずれも初版ではありません。各300円で、奥のリトグラフや油絵の下に置いてあります。

 さて、以下が棚にある署名本です。
折原一『暗闇の教室』
加納朋子『虹の家のアリス』
北村薫『朝霧』『覆面作家の愛の歌』
泡坂妻夫『ダイヤル7をまわす時』
有栖川有栖『幽霊刑事』
綾辻行人『霧越邸殺人事件』
城昌幸『金紅樹の秘密』
中井英夫『名無しの森』『香りの時間』
原りょう『さらば長き眠り』
恩田陸『絶海(アンソロジー)』
生田耕作『イレーヌ』
田中啓文『ハナシにならん!』他
津原泰水『赤い竪琴』他
寮美千子『青いナムジル』他
塚本邦雄『十二神将変』
丸尾末広『犬神博士』
グレゴリ青山『無印観光』
金子國義『アリスの画廊』他
唐十郎『河原者の唄』
串田孫一『流れる時』

いずれも美本で、一部新刊も混じっております。
CAVEさんの棚
 お問ひ合はせがあったので、棚の様子をご紹介。拡大してご覧ください。 

  
竹内敏晴さん、逝去
 演出家・竹内敏晴さんが、9月7日に亡くなってゐた、との報。

 http://www.asahi.com/obituaries/update/0910/TKY200909100070.html

 広島に住んでゐたころ、一度だけ合宿形式のワークショップに参加したのです。演劇にレッスンをベースにした「からだとことばのレッスン」は、それまで漠然と使ってゐた、言葉の運用のベースには身体があるといふことに気づかされる、充実した体験でした。

 『ことばが劈(ひら)かれるとき』(ちくま文庫)は、教師、アナウンサー、歌手、演劇人などといった言葉を使って仕事をされるかたは必読の書です。アラビクでも何冊も売ってきました。また仕入れなければ。

 ご冥福をお祈りします。
きっと食べてね
 入荷しました! 

 定価1,200円で店頭発売中です。通信販売ご希望の方はメールにてお問ひ合はせください。基本的に送料は180円です。複数枚希望されるの方は別途相談。
 連絡先はcake★qa3.so-net.ne.jp
 ★を@マークに置き換へてください。

 ヌートリアスとは?
2007年、小説家・津原泰水を中心に、四半世紀にわたってライヴ活動を重ねてきたラヂオデパートのステージに、ミキコアラマータのふたりが飛び入り。アラマタミキコは博物学者・荒俣宏の血縁で、そもそもの出逢いは夜の銀座であったとか。
思わぬ拍手喝采に有頂天となり、創作、ライヴ演奏両面でのコラボレーションを開始。その最初の結実たる楽曲が、自由奔放な言葉と炸裂するポップ魂の融合たる〈きっと食べてね〉だ。日本を代表する洋画家・金子國義の作品を装画に得て、いま大鼠たちの冒険が始まる。
アラマタミキコ(v,tp)、小山亜紀(v)、ビアンコ(v,g,key)、津原泰水(v,g,uk)、稲葉太朗(b)、奥野芳幸(d)
ヌートリアス
http://wave.ap.teacup.com/radiodepart/
 小説家・津原泰水氏が告知されてゐる通り、珈琲舎・書肆アラビク/Luftにて、ライブを中心に活躍してゐるバンド「ヌートリアス」のCDを販売ゐたします。店頭販売・通信販売ともに当店で承ります。
 販売方法等は追って告知ゐたします。ジャケットは金子國義。金子画伯のファンの方もコレクターズアイテムとして是非。