アラビクは大阪市北区中崎町にあるブック&ギャラリーカフェです。
http://www.arabiq.net/



(副室長)中国生まれの珈琲豆、君の名は
 先日、「珈琲屋を營みたい」旨を傳へてゐる舊知の友人に、焙煎機を店頭に置いてゐる珈琲豆小賣店に連れていつてもらひました。その店舖で取り扱つてゐる生豆の中に、友人は目ざとく中國産の豆を發見し、店員さんに質問してをりました。
店員さん曰く「中國でも珈琲を生産してゐるのですよ。あつさりしてゐて、若者に人氣です。」
 お値段もお手ごろでしたので、あめりかん珈琲の豆として使用するのによいのではないかと考へ、試しに贖入してまゐりました。
 さて、この豆を用ゐて珈琲を淹れてみますと、實にあつさりしていながら、カフェインの存在はしつかり感じられるまさに「あめりかん珈琲」向けの珈琲でした。輕めに抽出すれば、お茶代はりに何杯でも飮めてしまふのではないかと思へるやうな飮みやすさです。ただ、珈琲の酸味が苦手な方には、酸味が勝つやうに感じられるやうです。
 メニューに加へると面白いのではないか、と思つたので、他に珈琲豆の入手方法がないか檢索したところ、もつと素敵なことを知りました。
 この中國産の珈琲豆は「シモン」と云ふ名前ですが、これを漢字で書きますと、何と「思芽」となるさうです。ブックカフェで扱ふ豆としてこれほど素晴らしい名前はございません。
 室長、すとれいと珈琲のメニューとして採用してよろしいでせうか。
(室長)小林かいち


 東京古書会館にてトークショー「小林かいちと大正イマジュリィの絵葉書たち」を聴講した。講師は帝塚山学院の山田俊幸教授、舞踊研究家の芳賀直子女史、「版画藝術」編集者の辺見海女史。
 小林かいちについての知識はまつたく無かつた(と言ふか、調べたとしてもパーソナルな情報がまつたく不明の作家)のですが、夢中になつてしまつた。一枚の絵葉書では図像的な面白さしかないのですが、組になると(4枚でひと組なのです)ストーリーが発生し、これが面白い。まだ市場に出てゐないという国書刊行会の書籍の早刷りも購入し、熟読してゐるところです。

 大正イマジュリィ(図像)を代表する竹久夢二については、正直なところ「下手な作家」としか思つてゐないのですが、かいちの洗練には驚かされました。骨牌、蝋燭、薔薇、十字架、廃墟といったモチーフと、繊細で大胆な色遣ひ。俯く女たち。ゴシックロリータやアナスイや、といったものがが好きな女性にも受けさう。
 山田教授の「夢二の叙情はすなはち抑圧された性」との指摘に芳賀・辺見の両女史が「かいちのセンチメンタリズムに、女性は抑圧された性など読み取らない」と反論(?)されたのが面白かつた。ふむ、かいち=女性とは誰も指摘しないのも興味深いね。さういえば大正イマジュリイの作家に女性はゐるのかしらん。

 ところでかいちが特集されてゐる「版画藝術」を後でひもとくと、作家・詩人の寮美千子さんが古邨特集に寄稿されてゐた。寮は「楽園の鳥 カルカッタ幻想」という傑作小説(そしてミステリ界の名伯楽・宇山日出臣の最後の仕事でもある)をものしてゐるのですが、この本のカバーも現代版画で、実に大胆なものでありました。

小林かいちの世界―まぼろしの京都アール・デコ
小林かいちの世界―まぼろしの京都アール・デコ
小林 かいち,山田 俊幸,永山 多貴子
(副室長)骨董市へ大正を探しに
 はじめまして。珈琲部門擔當の副室長でございます。宜しくお願ひ申し上げます。
 本日は少し早起きして、四天王寺の太子會を覗いて參りました。大阪の四天王寺では毎月21日には大師會、22日には太子會と稱す骨董市が催されるのです。
 目指すはお店で使へる大正レトロな雰圍氣の食器、若しくは普段使ひしても全く惜しくないやうな着物でございます。
 さて、初めての骨董市で作法もわからぬまま、出店者の準備が整ふ前の境内を徘徊しました。と申しますのも、四天王寺の境内に到着いたしましたのが、7時50分頃。少々早めだつたやうで、商品の陳列を濟ましてゐるお店はまばらで、丁度これから準備に取り掛かると云つた雰圍氣でございました。8時半頃になりますと、お店が出揃ひ、見物しやすくなるやうでした。
 さうした中で、目が留まつたのは冩眞の2點。お店の小父さま曰く、「氣泡が入つてゐるのは古い證據。」の傳昭和初期のグラス5客組と、別のお店で見つけた螺鈿の花臺でございます。

 螺鈿の花臺は、花瓶に花を生けて飾つてもよいでせうし、珈琲カップを置く臺として使用してもよいのではと考へてをります。
 1時間ほどと云ふ短い時間ではございましたが、お店の方に話しかけてガラスのことを教へていただいたりして、樂しい時間を過ごせました。お近くの方で古いものに興味がおありでしたら、是非一度市が開かれてゐるときに境内を散歩なさいませ。おすすめです。
(室長)5月12日-13日、東京に
 ところでこの記録は正かなで書かうとつとめてゐるが、間違ひも多からう。やさしく指摘頂けると幸いです。いまのところ正字は無理です。

 さて、東京に出てゐたので古書市を廻つた。中野サンプラザを起点に中央線沿線の古書店を廻り、東京古書会館、ビッグボックスといつたところを。サンプラザでは仙花紙の艶本などをまとめて買つた。中央線界隈では探偵小説などを買う。その後オメガスイーツのショウルームへ。セレクトされすぎた本屋は隙が無く、意外な掘り出し物などとは無縁の雰囲気。それもまた勉強。後、近代文学の専門店のいくつかに行く。長居して話を伺つた。勉強になつた。最近音信がとれぬ友人の近況も知れた。よかつた。
夜は学生時代の友人たちと新宿へ。居酒屋の後、バーに行つたら、みな学生時代からはちょつと変わつた銘柄を頼んでいた。小生はいつものズブロッカのあと、すすめられるままウイスキーを頼んだ。ずいぶんとスモーキーなもので、征露丸のやうな香りだつた。嫌ひではない。

 翌13日は埼玉県立近代美術館。友人と誘い合はせ、澁澤龍彦展に行つた。写真におさめられた青年澁澤の華奢な姿に驚く。展示は正直、初期に紹介されるものは「ベタ」な印象だが、いや、澁澤なかりせば「ベタ」と思うことすらなかったのだらうな。正当な美術史などを習う機会のなかつた身には、澁澤こそが先生であつた。圧巻は四谷シモン製作の天使像である。幾何学の結晶。
 ところで晩年の机の上に置かれてゐたといふ万年筆、パーカーのものであつたのが意外であつた。パーカーは made in U.S.A.である。

 重い荷物によろめきながら帰る。帰つてから納車の手続き。安く小さい中古車だが、荷物はたくさん積める。芋でも買うように買つてやる、と思つて中古車屋に行つたのだが、価格ばかり気にしたので芋買うよりも無頓着だつたかもしれん。車なんぞよりも、古本や什器に少しでもいいものを揃えたい。
(室長)連休明け、不動産屋に
 黄金週間明け、出店希望地区の不動産屋をまわつた。よい感じで地元に密着した不動産屋だ。古本にたとえるならば、黒つぽい本です。店主の小母さん、真剣にこちらの条件を聞いてくださつた。わりによい物件がありさう。一気に話をすすめたい。
 その後既存のブックカフェへ。個人の蔵書といつた感じの棚が愉しい。探偵小説などを買つた。
アラビク大阪準備室について
アラビクは開店準備中のブックカフェです。屋号は「珈琲舎 書肆アラビク」を予定してゐます。

(住所等)
大阪にて物件を選定してゐます。夏の開業を目指してゐます。

(取扱品目)
珈琲各種・文芸書・各種イベント
*古書販売・買取を行ひますが、当店では原則として新刊書を取り扱ひません。あしからず。
本のジャンルは近代以降の小説が大半です。