アラビクは大阪市北区中崎町にあるブック&ギャラリーカフェです。
http://www.arabiq.net/



兄がきたらん(室長)
 兄がアラビクに来た。坪庭をどうするかを検討しにきてくれたのである。いつの間にか薔薇栽培を趣味にしてゐた。ようわからん人です。

 一通り作業を終えたところで土間を洗った。かういふ作業は手許をしてもらふとずいぶん捗る。工程通りの進捗です。明日もがんばらう。
生存報告(室長)
無事に大阪に帰つてきました。中央道は高低差激しく、1300CCの愛車を鞭打つやうに酷使しましたが、前日の午前10時30分に那須を出発し、午後9時30分に経由地である府中を出、翌朝8時30分に中崎町着。

今は寝てをります。作業は明日から。
友人たちへ(室長)
 愈々那須を発つ日が近づいてまいりました。当ブログの更新も滞りがちになるでせう。

 farewell messageを送つた友人たちからの当ブログ来訪が予想されますが、とりあえずそつとしておいてくださいませ。ここにゐるのはヤツではない。室長なのだ。そして想像以上のアクセス数があるぞ! 名前とか明かさないやうに。嘘。そんなにアクセス数はないです。
 かやうにここでの「室長」の日常の記述は、嘘・大げさ・紛らわしい表現を多く含んでいる。小説や酒を愉しい、美味いと書いてゐるときとは正反対の態度です。これは本当。好きな小説、好きな絵、好きな人……立場を弁えずに好き好きと云つてゐるうちに当店は実現した。わたしが好きだ愉しい愛してると云ふときは、いつも本気です。

 同僚から招き猫を貰つた。猫は中崎町にも多い。当店に来られる際はきつと迷うだらう。しかし猫をからかつてゐるうちにたどり着く。さういふ店です。
登坂淳一さん(室長)
 当ブログではどのやうな検索ワードで検索されたかが判る機能があるのですが、これまで上位検索ワードであつた「小林かいち」を押しのけて連日ヒット数を稼ぎ続けてゐるのが登坂淳一さんです。日本放送協会所属のアナウンサー氏です。江崎史恵さんじやなくて?
 検索してみました。
http://www.google.co.jp/search?sourceid=navclient&hl=ja&ie=UTF-8&rls=GGLG,GGLG:2006-44,GGLG:ja&q=%e7%99%bb%e5%9d%82%e6%b7%b3%e4%b8%80 なるほど、皆様登坂氏の体調が気になる模様。

 ところでホンジツの江崎さんは、小学校で児童のランドセル(赤)や縦笛やを数百本にわたり盗み続けてゐた35歳無職の男が逮捕されたニュースを冷ややかに読み上げてをりました。
Water! (室長)
 日曜はペンキ塗り。薄めずにつかつてしまひ、塗料を無駄に多くつかつてしまつたかもしれない。嗚呼。
 作業合間にはまめに水分をとらないと。いつまでも暑く、熱中症になりさうです。
 ところで当店ではいまのところ生ビールを置く余地はないのですが、ビール好きとしては何もないのは寂しい。なので瓶ビールをいろいろと試す日々です。先日みつけたのは、ベルギーの「ローデンバッハ」なるビール。赤いラベルが可愛い。

 やや読者の姿が見えはじめたこのブログですが、ベルギーのローデンバッハ(ローデンバック)と云ふと「死都ブリュージュ」! と反応していただければ嬉しい。ブリュージュとは英語で云ふブリッジの意。すなはち水の都ブリュージュを舞台に、落ちぶれた富豪が亡妻の幻を追ひ、徘徊する都市小説です。ええと、都市小説と呼ばれるジャンルがあるのですね。永井荷風あたりを思ひ出していただければピンと来ると思ひます。荷風もローデンバッハは好きだったとの由。当店には常備の予定。ビール、小説とも。できるだけ荷風も。


 さて、予想外の方面からとあるオファーをいただき、府中へ。東京の府中です。広島にあらず。
 こちらが呈示した条件を承諾していただけさうなので、うまくいくと思ひます。詳細はまだ告知できませんが、中崎の各ショップとは相性がよく、それでゐてまだ実現されてゐないイベントが開催できるんじやないか、と思つてをります。
今日の江崎さん(室長)
 NHK正午のニュース、関東ローカル版はアナウンサーが江崎史恵(えざきしえ)さんです。クールな表情で原稿を読み上げる彼女ですが、ひろいおでこが親しみやすい雰囲気を醸します。広島放送局を経て東京勤務、とのことでお昼のニュースが楽しみなのですが、もうすぐお別れになります。嗚呼寂しい。28日あたりに大阪に帰る室長です。

 ところで江崎さん、18日の放送時には髪にウェーブがかかっていたのですが、翌日にはストレートヘアに戻つてゐました。きつと「アナタお昼の顔なのよなにさそんなふうに髪を洋髪にするなんて、自覚が足りないんじやないの? もうあなたにはニュースなんて読ませないわよ! バッカみたい! ちよつと顔がかわいいからつて!」などとカツゼツよく先輩アナ(登坂淳一)におネエ言葉で罵られて涙ながらに美容院に行って「あれー? どうしたの? この間パーマしたばつかりじゃない? 気に入らなかつた?」とか言われたに違いありません。嗚呼かわいさうな江崎さん! そして美容院の人に「いえそういうわけじゃないんですけど……」と口ごもりつつ言うものの、おネエ言葉の登坂アナの表情を思い出しては悔しさに涙声になりさうになつて「はやく髪を、お願いします」と云うのが精一杯。そして許せないのは涙に潤んだ瞳を盗み見る美容院の人! ……何を書いてゐるんだ、おれは。

(えざきさん→ http://cgi4.nhk.or.jp/a-room/aroom.cgi?i=92


 ところで甘南備あさ美ちゃんから一言。

  えー、イノモケ文学賞の高原賞の賞品が送られてきたのでご覧じてください。
 賞品といっしょに全作品のプリントアウトが入つてたんですけど、東雅夫賞の君島慧是さんの「嵐」が泣けました。
ご挨拶まはりなど(室長)
 物件の屋根に工事がはいつたため、作業を小休止。古い家ゆえ、大規模な工事となると土が零れるのです。
 その間、作家寮美千子さんにご紹介を頂いたedge(http://edge-web.net/)に門坂流展をのぞきにいつたり。中崎町の中で群を抜くメジャー感を漂はせてゐるedgeには、気後れからご挨拶ができてゐなかつたのだ。画廊主様にも無事ご挨拶。よかつた。
 門坂作品、最初は銅版などの版画かと思つてゐたが、なんとペン画なのださう。驚いた。会期は本日(18日)まで。

 中崎3丁目は古参のedgeをはじめ、8月にブックカフェcarambaがオープンしてゐる。そして以前カヌトンカフェがあつた場所にも新たにギャラリーがオープンした。みなそれぞれに個性と洒落た雰囲気を漂はせてゐる。
 同じ業種が固まると競争と同時に集積効果がはたらき、コンシューマ、サプライアの双方にメリットが生じる。神田の古書街、秋葉原の電器街、新宿の百貨店…… 長いこと都市経済学を勉強してゐた身、同業種が集まると心強く、嬉しく思へる。皆様、是非中崎3丁目に足をお運びください。当店は10月中旬に開店です。edgeから旧カヌトンに向かつて歩き、その十字路を左折。


 ご挨拶と云へば、金曜日に以前の職場(広島)に連絡した。会社を辞めてかくのごとき仕事をはじめます、と伝へたところ、週明けの本日、仲がよかつた人たちからメールが届きはじめた。適宜抜粋。

 >そっちの方が絶対にあっとるよ。

 >私も、そちらで実力を発揮されるのをすごい楽しみにしとるよ。

 >でも、本屋さんてにあってますね〜。 

 キミタチ、そんなにわたしの現職は残念な感じでしたか……
 いやいや、さういふことじゃないよな。みんな、ありがたう。
事務的なことなども(室長)
 たまりにたまつたレシートや領収書を整理中。ずつと経理の仕事をしてゐたので、お手のもの。それにしても多いこと。今の部屋は住んで半年もたたぬと云ふのに、見つけても見つけても、次々とレシートがあらはれます。中には色が擦れてしまつたレシートも。感熱式は嫌ですね。もうないだらう、と思ってゐても、引き出しからあらはれスーツのポケットからあらはれ本棚の裏からもあらはれる。鉱脈のやうに似た場所から次々とレシートが出てくる。1つ見ると後30葉はあるに違ひないです。

 さていまどきの書店のレシートはたいがい、ISBNが記されてをり、オンライン書店などでそのISBNを検索すれば、何を買つたかが分かるやうになつてゐる。おそろしいことです。そしてISBNと云へばバーコード。以前にも書いた気がするが、古書と現行書とを扱つてゐると、バーコードがいかにも無粋であると思はれてくる。

 福岡の書店の話をする。福岡県では書籍の万引き→古書店への転売を防止する目的で、買ひ上げられた書籍にシールを貼るという試みがなされてゐる。ゐた。ずいぶんと形骸化してゐるらしい。万引き防止の「まんぼう」シールだが、ネットで見る限り、概ね不評である。愛書家には本が「汚される」気になるらしい。

 試み自体は受け入れるべきものだと考へる。新刊+古書といふ営業形体の立場においては尚更。
 「まんぼうシール」のデザインはさておき、各書店がオリジナルのデザインのシールを用ゐる制度にすれば良いのではないか、と考へる。バーコードをたくみに隠すデザインのものが生まれるだらう。むしろそれでバーコードが隠れるのならば、美意識次第では歓迎されるに違ひない。あるいは昔の検印のやうに、あらかじめ奥付にシールを貼るスペースがあつてもいい。
 
 古書の見返し部分には、古書店の値札の名残がある場合が多い。複数に及ぶ札が残つてゐるものもしばしばだ。当たり前だがデザインもそれぞれ違う。あまりたくさんになると、次に値札を貼る古書店主が「どこにはつてやらう」と悩んだ形跡が見てとれさうで、飽きない。なによりそれがたくさん貼られてゐると云ふのは、何度も最流通された証。面白い本に違ひない。

 わたし自身は愛書家とはとても云へない。好書家と呼ばれるのもおこがましいが、ともあれ本の内容だけでなく、佇まいも大切に思つてゐる。次々と札が貼られた後もまた、古書の佇まいに風格を与へるものだ。

 さう思つて本をひらくと、はらりと領収書が落ちてきた。蔵書の中にあと30葉はレシートが挟まつてゐるに違ひない。戦慄。
幕末の乙女心(室長)
 先日ある人にある小説を紹介した。前回のエントリで、どんな状況でも必ずある乙女心について触れたので、こちらでもその小説を紹介してみやうと思ふ。野呂邦暢『諫早菖蒲日記』だ。文芸春秋より出版されてゐたが現在は絶版。

 野呂邦暢は芥川賞を受賞し、作品が映像化され、さあこれから、と云ふところで亡くなつてしまつた。享年42歳。惜しい作家です。最近、人気作家の桜庭一樹が『愛についてのデッサン』を紹介したことで若い読者たちに再評価されてゐる。文芸系古書マニアは必読の小説。古書好きでなくても、落ち着いた文章の佇まいに一読、ファンになる方も多からう。名作です。なおこの作家、創作についてはずいぶん模索を重ねたやうで、ミステリも書いてゐる。本格です。興味のある方は調べてください。

 ジャンルの模索を続けた野呂が書いた時代小説が『諫早菖蒲日記』で、こちらは著者ゆかりの諫早を舞台に、幕末の諫早藩砲術指南役を父に持つ少女、志津の一人称で書かれてゐる。冒頭、諫早湾に帆をあげる船の描写が鮮やかだ。
 

 まっさきに現われたのは黄色である。
 黄色の次に柿色が、その次に茶色が一定のへだたりをおいて続く。
 堤防の上に5つの点がならんだ。
 堤防は田圃のあぜにいる私の目と同じ高さである。点は羽をひろげた蝶のかたちに似ている。


 気丈でお転婆でさへある志津だが、新しく拵へてもらふ筈の絣の着物が、藩の財政事情の煽りから自粛せざるを得なくなつたときの落胆と、裏腹な健気さとはまさに乙女の鑑。何度でも読み返してしまひます。

 なおこの作品、最後までよむとあつと驚かされる。ともあれ、乙女心をもつた方なら、女性も男性も宇宙人も、是非お読みください。

 ところでネットを探つてゐると、野呂のエッセイの文章が引用されてゐた。孫引き。

小説という厄介なしろものはその土地に数年間、根をおろして、土地の精霊のごときものと合体し、その加護によって生み出されるものと私は考えているhttp://machi.monokatari.jp/a2/item_1848.html
(伊藤裕幸「長崎もの語り散歩」より)


 土地の精霊の加護! ジャンルの模索を続けた野呂のこと、あの文章力で中上健次や大江健三郎を向かうにはつたマジック・リアリズム小説を書いてゐたなら……! 返す返すも長生きを、せめて人並みにでも生きてもらひたかつた作家です。
災害や戦争に彩らた週末(室長)
 なぜか副室長が宇宙人を呼びはじめた。ベンドーラベンドーラ。弊店では宇宙人のお客様も歓迎いたします。エンバウーラ!
 タイトルとは裏腹に呑気な記述が続きます。

 意外にも身の回りでは台風被害が発生しなかつた週末はフリーに。池袋で友人と飲んでみたり所沢の彩の国古本祭りに行つてみたり神保町でご挨拶をしたり渋谷の志賀昆虫館に行つてみたり。根堀りを購入。最近は以前より売れないらしいです。根堀り。みんな高山植物の採集とか興味ないですか。わたしもあんまり興味ないですが。

 渋谷ではついでに映画館をのぞく。ヱヴァンゲリヲン新劇場版を見やうかと思つたのですが、「次の次の」会まで満員。やつてられんので移動。


 翌日の日曜は宇都宮のインターパークへ。今日こそヱヴァンゲリヲン新劇場版。勇んでいくが、近くにジョイフル本田があつたのでのぞくことにした。呆気にとられた。新今宮のコーナンが小型店舗に思へる。アンティークコーナだけで小学校の教室4つ分くらひあるだらう。参つた。結局10時過ぎに足を踏み入れて、出たのが午後4時前。ランプなどを買つた。

 映画館でヱヴァンゲリヲン新劇場版をやうやく見る。ラミエルううう。面白かつた。いまさらエヴァ? 極太明朝の字体をみると、どうにも気恥ずかしいほどであつたのが、すつかり満足してしまつた。内容はテレビ版を踏襲したもので、ヤシマ作戦までが描かれる。この後「破」篇、「急」篇と続くやうだが、「破」あたりからはテレビ版を離れていくやうだ。

 その後隣接するショッピングセンターに行つたらば、古書市が開催されてゐた。それなりのスペースで、佐藤書店など、よく話に聞く店が出てゐた。吉屋信子の『あの道この道(下巻)』が買へた。国書刊行会からの復刻版にはない、松本かつぢのカヴァー絵がいい。中原淳一えがく少女たちは憧れの的だが、かつぢのえがく健康的な少女たちも愛らしく、心惹かれる。
 気をよくして色紙などの紙ものコーナーを漁ると、使用済みのかつぢの封筒・便箋セットがあつた。兄に宛てられた少女の手紙のやうだ。文章の大半は封筒に隠されてゐるものの、便箋をおねだりする文面に、空襲という言葉が見て取れたので、買ふことにした。
 戦時下の少女が如何に乙女心を保つてゐたかは、「ひめゆりの塔」で淳一のカードを目にして以来、室長にとつて重要なテーマだ。手紙はいずれ公開します。是非弊店でご確認ください(笑)
 
 思ひがけず良いものが買へた。ジョイフル本田はもう一度くらひ行きたい。