既に廃刊となつてしまいましたが、「Beth」誌は意欲的な作品が多く、愉しく読んでをりました。なかでもいちばん楽しみにしてゐた漫画が松田奈緒子「100年たったらみんな死ぬ」でした。母親のいない4人家族を中心にした群像劇で、毎回必ず笑へるポイントがあり、それでゐて必ず家族や友人たちとの関係を考へさせられる良質なヒューマンドラマでもあり、たつた2巻分の連載だつたとは信じられない密度は昔の名作漫画のやう。
今回読み返してみて気づいたのは、ほとんどの登場人物の家族が何らかのかたちで「欠けて」ゐるということ。メインキャラクターで家族関係が「欠けている」と明らかになつていないのは、ホスト・星流児と雑誌編集長・三田園早矢子くらいのもの(その三田園もまた、シングルマザーとなることで欠けた家族を作ることになる)。家族の空白がほとんどの物語を推進させてゐるといふ点を瑕疵として指摘する人もあるかもしれないが、いや、この漫画はそこにこそテーマがあるのだ。
ところで三田園の子供の父親が誰か、とは明らかにされないが、いくつかのヒントがあるので、推定することは可能です。「この人」と理由つきで説明できる方は当ブログのコメント欄もしくは店頭で仰つてください。何かします。
さて、きわめてどうでもいいことですが、この漫画の中に「眼鏡で長身の坊主頭の漫画マニア・名多田」が登場する。これが
カランバのハシモトさんにそつくりで、せんじつハシモトさんに「まさか名多田つてハシモトさんがモデル?」と聞いてみたのですが、どうも違うやうです。うーん、ハシモトさん、ほんとに誰かの視線を感じたりしてゐないですか?
当店の棚構成の都合上、漫画は仕入れませんので、松田奈緒子「100年たったらみんな死ぬ」は大手書店でお求めください。上下巻あはせて1,700円です。