寮美千子さんより、山本じん讃
2012.12.05 Wednesday
12月8日(土)のトークイベント、受付を締め切りました。いよいよ明日より個展開催です。
さて、山本じん個展[La lumière au fond des ténèbres-闇の奥の光-]にむけ、作家で詩人の寮美千子さんより推薦文を賜りました。ありがたうございます。錣気鵝12月6日から8日にかけてじんさんはご在廊です。お待ちしてをりますね。
以下、寮さんの許諾を得ましたので、推薦文を公開します。引用したい、という方は必ず当方まで連絡してください。
山本じん氏の作品にはじめてじかに触れたのは、2002年、銀座の青木画廊だったと思う。幻想系の画家の作品を多く擁する画廊だが、氏の作品ははっきりと特別の光を放っていた。幻想系でありながらも、奥までびっしりと詰まった密度がある。ふわふわとした希薄な夢ではなく、異世界を反射する鏡の表層でもなく、確かにそこに実体があるのだ。それでいてひどく軽やかなのは、あたかも、腕の立つ彫刻家の手にかかると、比重の高い鉱物に刻まれた翼が、重さを失って無重力空間にたやすく浮かぶようであった。
2010年、山本じん氏の故郷である岡山県早島で開催された個展を見て、合点がいった。畳表の流通拠点として栄えたこの町には、財を成した人々が贅を凝らして作った古い日本家屋が建ち並び、静かな美を醸していた。長い時間が織り込まれた暮らしの美は、極めて現実的でありながら、同時にわたしたちを強い幻想世界へと誘ってくれる。この町で育った山本じん氏のなかにある幻想性は、モチーフがいかに西洋的なるものであったとしても、ここにこそ深く根ざしているのだと感じた。だからこそ、羊皮紙と銀筆を用いても、球体関節人形であっても、真実咀嚼された本物、「山本じん」としか呼びようのない独自性を保ち、それが仄かな光を発し、わたしたちを幻想のより深い闇の奥へと連れ去ってくれる。
寮美千子(作家・詩人)