アラビクは大阪市北区中崎町にあるブック&ギャラリーカフェです。
http://www.arabiq.net/



寺田楓個展「饒舌な花」 アラビク にて開催

 寺田楓 個展「饒舌な花」アラビク にて開催いたします。

 会期が変則ですが、前半後半で掛ける作品が少し変わります。

 

 若き作家による絹本を中心とした日本画です。花、植物、昆虫と女性像をおもなモチーフとしていますが、真骨頂は正確なデッサンをベースにしたフィクショナルな歪みに。ご期待ください。

 

 

 

寺田楓 個展「饒舌な花」

会期 1期:7月28日(木)-8月8日(月)  2期:8月11日(木)-8月22日(月)

場所 珈琲舎・書肆アラビク

   〒530-0016

   大阪市北区中崎3-2-14 

   t/f 06-7500-5519

         mail cake[at]qa3.so-net.ne.jp

 

 

 

 

craft art DOLL 2016刊行されます

『craft art DOLL 2016』(マリアパブリケーションズ刊)に記事を執筆しました。河野甲・河野滋子、相場るい児・海藤亜紀さんの制作風景を伝えております。取材をする中で印象に残ったのは、長く活躍する作家は制作環境を整えるのがうまいということです。

 

 まだ書店には並んでいないのかな。ええと、アラビクだと手に取っていただけます(婉曲表現)。アマゾンリンクは予約受付中とのこと。このリンクから買っていただくと当店にアフェリエイト収入というものが入ります。助かります。

 

 

2015年版も。こちらは素材と制作というテーマで井桁裕子、影山多栄子、高橋野枝(Noe)、山本じん、山吉由利子、吉村眸を紹介しています。

愛染ぱらぱらと有栖川有栖『幻坂』

 大阪にも三大祭があるのです。6月30日から7月2日にかけての愛染堂勝鬘院、通称愛染さんでのお祭りが皮切り。この3日のうち必ず一度は雨が降る、というので「愛染ぱらぱら」なる言葉があるんですが、今年はもう降らないかな。

 

 有栖川有栖さんの短篇集『幻坂』にもこの愛染パラパラをテーマにした小説が収録されていました。

 

「このへんは伶人町というけど、伶人というのは四天王寺で雅楽を奏でた楽人のことや。楽人が住んでいた町やからそう呼んでる。地名だけは、地震や火事にも戦災にも耐えて残るんやな」

「愛染坂」角川文庫版47

 

 

 

 古い土地と響きあうようにあらわれる幽霊たちと、そこに住む人間たちの物語が綴られた作品集。有栖川さんが得意とする推理小説は、物語の冒頭で死んだ人間が、生きている者たちによってその死の謎を解かれていく過程を描く(あるいは死者が生者たちを支配する、と言い換えてもいい)もので、それは殺された人間の尊厳を、生者たちが取り戻していくという物語でもある。

 

 作家のまなざしは大阪の土地や言葉にも向けられている。
 

  『山崎豊子自作を語る[人生編]』(2012,新潮文庫)を読んでいたところ、大阪弁は

「商業語、商人言葉としては複雑豊富なニュアンスを持っている」「その代り、ラヴシーンと心理の独白の時には大阪弁の弱さを感じる(中略)手をさし伸べて女を抱擁しようとする時(中略)「おいでやす」で、まるで一杯飲屋の客引きのような恰好になってしまう」 

「小説のなかの大阪弁」『山崎豊子自作を語る[人生編]』

 

とあった。大阪弁、恋愛を描くには向いていない、というのが山崎豊子の認識なんですが、有栖川さんは大阪弁を効果的に用いています。

 

 ロマンス小説の女性翻訳家が、死んだ先輩に語りかける二人称の小説「真言坂」ではこんな感じ。

 

“I’ll leave if you prefer”

そこでキーを叩く手が止まりました。

お望みならば、ぼくは消えるよ。

そう訳せばいいだけのようでいて、しっくりときません。こんな文章で迷うなんて、本当にプロの翻訳家なのか、と中学生に嗤われそうです。

(中略)

――ぼく、行くわな。

そんな声が耳の奥で聞こえました。

(中略)どこかあなたと似ているのです。小さな仕草、言葉の選び方、女性と話す際の間といったものが。(中略)もしかすると「ええやんか」なんて訳文をうっかり直し忘れているかもしれません。

角川文庫版 129-131

 

 大阪七坂の怪異をテーマにしているのですが、怪談だけでなくゴーストハントものなども含まれているので楽しい。人の営みとともに、土地の名を記録すること。土地の記憶を残すことも文芸作品の大きな役割。